第11回 早稲田大学 小野記念講堂 in のレポート

「人生に、文学を。」オープン講座

【in 早稲田大学 小野記念講堂 2018年6月9日(土)】

第11回目の講師は、奥泉光さん。あつい夏日の訪れのなか、近代日本文学草創の地、早稲田大学の小野記念講堂にて講座が開催されました。「今日はフルートは吹きません!」という言葉とともに、明るい青のジャケットを着て颯爽と登場した奥泉さん。今回のテーマは、「近代小説の技法をめぐって」。明治以降の日本文学がどのように作られてきたのか、そこにはどのような課題があったのか。漱石作品を読み解きながら、リアリズムからモダニズムへの移行を、文学のみならず、音楽・絵画を横断しながら、その歴史を語っていただいた。

第11講 講師 奥泉光さん
「近代小説の技法をめぐって」
司会進行 西川 清史(文藝春秋)

奥泉光さん講義より抜粋

漱石は『草枕』で自分の考える文学観を一番良く語ることができただろう。その背景には、漱石がイギリス留学時代、「リアリズム文学」から「モダニズム文学」への転換点に立ち会っていた経験が大きいと考えている。等身大の主人公により、写実的に語られるリアリズム文学に対し、偶発性に富み語りの透明性に乏しいモダニズム文学は、当時リアリズム文学が主流であった日本では、まだ評価が定まっていなかった。漱石はこのモダニズムの流れを自分の文学とし、帰国後多くの作品を著すことで、大きな足跡を日本文学に残していくことになる。

第11講 奥泉光さん

19世紀のリアリズム、20世紀のモダニズムと文学の流れが変わってきた中、現代は「ポストモダン」時代に突入している。それはいわば、“なにを表現してもいい”という、作り手側に自由を与えることになった。ただその反面、ルールの無い自由がいかに表現者にとって難しいことかということを実感している。そこで21世紀の表現者たちは私も含め、新たな表現方法を編み出し、新しい作品づくりに挑んでいる。今回の私の作品『雪の階』もそんな新しい表現に挑んだ作品の一つだ。

イントロダクション

まずはヨーロッパの文学史を俯瞰して語る奥泉さん。19世紀の「リアリズム文学」から、20世紀にアンチリアリズムとして台頭した「モダニズム文学」。ヨーロッパから日本に伝わったリアリズムは、坪内逍遥、二葉亭四迷の手で、日本版リアリズム小説の完成を迎えます。その後すぐに、モダニズム文学として登場する夏目漱石。近代日本文学の展開とその課題に対して、現代作家の一人として、どう向き合っていくのか。新たな表現にたどり着くまでの道のりを語っていただきました。

イントロダクション

奥泉光さんの講義はコチラ

第11講 「近代小説の技法をめぐって」

講座日時 2018年 6月9日(土)14:00~16:00
募集人数 100名様
奥泉 光さん メッセージ 技法の観点からみたとき、日本語による近代小説にとって何が課題であったのか。そしていまなお課題であり続けているのか。リアリズムからモダニズムへと推移した近現代小説の歴史を踏まえつつ、漱石作品および自作を語るなかで考えてみたい。
課題図書 こちらの「課題図書」2冊を必ずお読みの上、ご参加ください。
『草枕』
夏目漱石著
新潮文庫
『草枕』 夏目漱石著 新潮文庫
『雪の階』
奥泉光著
中央公論新社
『雪の階』 奥泉光著 中央公論新社

奥泉 光プロフィール

1956年山形県生まれ。

国際基督教大学卒業。現、近畿大学文芸学部教授。1986年に「すばる」に掲載された「地の鳥天の魚群」でデビュー、注目される。1993年、『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、翌94年、「石の来歴」で芥川賞を受賞する。98年に発表した『グランド・ミステリー』は奇想天外な展開の中にさまざまな小説技法を駆使し、ミステリ界に衝撃を与えた。2009年、『神器―軍艦「橿原」殺人事件―』で野間文芸賞、14年、『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を受賞。他の主な作品に『鳥類学者のファンタジア』『モーダルな事象』『シューマンの指』など。2012年より芥川賞選考委員。