「人生に、文学を」オープン講座 in 立命館大学のレポート公開中!

「人生に、文学を。」オープン講座

【in 法政大学 2019年6月29日(土)】

第16回目の講師は大沢在昌さん、会場は市ヶ谷 法政大学。
「人生に、文学を」ならぬ「人生に、ハードボイルドを」という大沢さんの言葉が、雨がそぼ降る梅雨のうっとうしさを吹き飛ばし、会場を明るい空気で満たしてゆく。
今回のテーマは「私がハードボイルドを書く理由」。長く、暴力とエロスのジャンルという誤解があったハードボイルドだが、数多の才能の輩出が、その見方を大きく変えてきた。10代初めでその魅力にとりつかれた大沢さんが、作家になるまでの道のりと、ハードボイルドの魅力について語ってくれた。

第16講  講師 大沢在昌さん
「私がハードボイルドを書く理由」

大沢在昌さん講義より抜粋

私がハードボイルド小説に出会ったのは中学生の時。親から買い与えられた世界の名著シリーズを読むうちに、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティなどの推理小説に夢中になり、そこから海外の翻訳シリーズを読破していった。その中で運命的に出会ったのが、ウィリアム・P.マッギヴァーンの『最悪のとき』。警官なのに汚職をしていたり、主人公自ら命の危機にさらされていたりと、今まで読んできた小説とは違う新鮮な物語に、感動が抑えきれなかった。これが私のハードボイルド小説との出会いで、そこから更にハードボイルドの魅力にとりつかれていった。

第13講 東山彰良さん

ハードボイルド小説の誕生は、その時代背景を色濃く映している。アメリカの禁酒法によるギャングの台頭と、それに群がる汚職警官。第一次世界大戦で、それまで考えられなかった数の死者が出たことによる、人々の死生観の変化。これらの影響により、簡潔な客観的行動描写で主人公の内面を表現するハードボイルドというスタイルが形作られてきた。

ハードボイルドの主人公というと冷酷非情なイメージで語られることが多いが、私はそうは思わない。ハードボイルドの登場人物たちは、優しい気持ちを持ってはいるけれど、それを表に出さない。そんな「惻隠の情」が込められた物語がハードボイルドだと考えている。日本でいうと浪花節のようなことだろうか。

第13講 東山彰良さん

私が小説を書き始めたのは中学2年生の時。短編120枚を初めて書き切ったときの喜びは今でも覚えている。そこから高校時代は年間1,000冊の本を読み、5~6本の作品を書いた。そんな中でも私にとって大きかったのは、中学時代に憧れのハードボイルド作家、生島治郎氏に手紙を書き、その返事をいただくという望外な体験をしたことだった。大学進学を機にハードボイルド作家になることを決め、21歳の時にオール讀物新人賞にノミネート、その後、小説推理新人賞を受賞してデビューした。

私のデビューした1980年前後は、ハードボイルド・冒険小説家のデビューが相次ぎ、北方謙三、船戸与一、逢坂剛、佐々木譲、志水辰夫など、スターになる作家が続出した。その中で私だけがいつまでも売れず、”永久初版作家”とまで言われ不遇をかこっていた。1年半かけて全力投下した『氷の森』も重版されず、賞の候補にも入らなかった。そんな中、「ダメな作家なのか俺は」と半ば開き直って書いたのが、後のヒット作となる『新宿鮫』シリーズだった。

第13講 東山彰良さん

イントロダクション

ハードボイルド小説は時代とともにいなきゃいけないと思う。過去の作品ももちろんいいと思うが、現代の作家としては、今を生きている主人公や、今起きている犯罪を反映したい。またハードボイルドは人生の指針になると思う。「大沢さんにとってハードボイルドとは?」という質問に対しては、いつもこう答える。「俺が書くものがハードボイルドだ」と。

イントロダクション

大沢在昌さんの講義はコチラ

第16講 「私がハードボイルドを書く理由」

講座日時 2019年 6月29日(土) 14:00~16:00
募集人数 150名様
大沢 在昌さん メッセージ ハードボイルドは暴力とエロスのジャンルだという誤解が、長く日本にはありました。
それがようやく解けたのが、この二十年のことです。社会と犯罪のありようを通して時代を活写し、叙情性が心に残るハードボイルド。十代初めでその魅力にとりつかれ、ついには実作者になってしまった私の話を聞いてください。
課題図書 こちらの「課題図書」2作品をお読みの上、ご参加ください。
『待っている』
レイモンド・チャンドラー著
創元推理文庫
『待っている』レイモンド・チャンドラー著 創元推理文庫
『魔女の笑窪』
大沢在昌著
文春文庫
『魔女の笑窪』大沢在昌著 文春文庫

1956年生まれ。愛知県名古屋市出身。慶應義塾大学中退。1979年『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞しデビュー。1986年『深夜曲馬団』で日本冒険小説大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門賞、1994年『無間人形 新宿鮫4』で直木賞、2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞、2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞。2001年『心では重すぎる』、2002年『闇先案内人』、2006年『狼花 新宿鮫9』、2012年『絆回廊 新宿鮫10』で日本冒険小説大賞を4回受賞する。