「人生に、文学を」オープン講座 in 立命館大学のレポート 公開中!

「人生に、文学を。」オープン講座

【in 立命館大学 2019年3月16日(土)】

第14講目の舞台は京都の立命館大学。前夜からの雨もあがり、陽射しがさし始めた衣笠キャンパスに、直木賞選考委員も務められる宮城谷昌光さんをお迎えした。宮城谷さんと立命館大学には浅からぬご縁がある。世界に誇る漢学者、白川静博士が研鑽を重ねたのが本学であり、それを記念した白川静記念・東洋文字文化研究所がこの地に置かれている。白川氏による金文や硬骨文の研究に自身の文学の光明を見出した宮城谷さんは、白川氏に深く私淑して、作品世界を構築してゆく。その集大成ともいえる作品が、今回のテーマともなっている『三国志』全12巻である。
演題はずばり「三国志の面白さ」。後漢末期、三国志の英雄曹操が亡くなるまでの激動の時代を、氏ならでは視点で語ってくれた。

第14講  講師 宮城谷昌光さん
「三国志の面白さ」

宮城谷昌光さん講義より抜粋

三国志には2つの大きな山場がある。
1つは袁紹と曹操が戦う「官渡の戦い」、もう1つは曹操と孫権・劉備連合軍が戦う「赤壁の戦い」である(3つ目に「秋風五丈原」を加える場合も)。三国志の始まりは、陳寿の『正史 三国志』で、これが最も当時の歴史に即している。ただこの三国志はあまりに簡潔すぎたため、宋初の歴史家 裴松之が逸話を含めた注を加えた。現在、いわゆる三国志として世に知られている作品は、明代 羅貫中によって記された『三国志演義』で、ここから物語としての三国志が生まれることになった。この『三国志演義』から、劉備を中心とした関羽・張飛の3人に諸葛亮孔明を加えた構成が取られ、物語としての普及に大きくつながっていくことになった。

第13講 東山彰良さん

今回取り上げる後漢時代は魏・蜀・呉の三国時代に突入する直前の時代で、数多くの画期的な発明がなされている。その中でも最も注目すべきなのが、蔡倫の紙の発明である。紙が生まれたことにより、『春秋左氏伝』という孔子の注釈本が三国時代のベストセラーとなり、その物語が武将の指針として伝わることになった。これ以外にも『説文解字』という最古の部首別漢字字典や、鐙(あぶみ)など、のちの中国の歴史に大きな影響を与える発明がなされている。

第13講 東山彰良さん

また後漢時代末期には、三国の争いから背を向けた魅力的な人物が数多く生まれており、その中でも傑出した存在が皇甫嵩である。幼い時から父の教えで詩と書に通じた皇甫嵩は、時の皇帝 霊帝に仕え、朱儁(しゅしゅん)とともに黄巾の乱平定に力を注いだ。朱儁が苦戦していた戦いで自らの策で勝ちを得た時でも「武勲はすべて朱儁のものでよい」という謙虚な姿勢をとっている。勝利によって自分の利を得ることを考えなかった皇甫嵩は、その後も常勝を続け、最後まで忠をつらぬく姿は、名将中の名将として語り継がれている。

第13講 東山彰良さん

イントロダクション

私が小説を書き続けるエネルギーの源には「半可通」という一つの言葉がある。この言葉に出会ったのは寺田寅彦の著書で、意味としては一知半解、つまりすべてが分かってしまうことがない状態のことだ。分かっていないからこそ、「どうしてだろう」「なぜだろう」という好奇心の泉が湧き続ける。そういった熱量が小説を書き続けるエネルギーとなっている。三国志というものも私にとっては「半可通」で、これだけ書き続けてきてもまだまだ知りたいと思わせる、そんな魅力的な人物に出会えるのが「三国志」だ。

イントロダクション

宮城谷昌光さんの講義はコチラ

第14講 「三国志の面白さ」

講座日時 2019年 3月16日(土) 14:00~16:00
募集人数 120名様
宮城谷 昌光さん メッセージ 三国志は後漢末期(曹操が亡くなるまで)がもっとも面白く、その時代の人物を正史をもとに、さぐってみたい。演義とはちがった面白さを発見できるような気がしている。小説家の視点がどのようなものか、わかっていただけるとありがたい。
課題図書 こちらの「課題図書」2冊を必ずお読みの上、ご参加ください。
『三国志名臣列伝 後漢編』
宮城谷昌光著
文藝春秋
『三国志名臣列伝 後漢編』 宮城谷昌光著 文藝春秋
『「三国志」の知恵』
狩野直禎著
講談社現代新書
『「三国志」の知恵』 狩野直禎著 講談社現代新書

昭和20年、愛知県蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事する。帰郷し、塾講師を務めつつ発表した「王家の風日」(昭和63年)で脚光を浴びる。平成3年、『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞し、『重耳』で平成5年度芸術選奨文部大臣賞、平成13年、『子産』で吉川英治文学賞を受賞する。中国歴史小説に新しい地平を開いた功績が高く評価され、平成16年に菊池寛賞、同18年に紫綬褒章を受章、さらには『劉邦』で平成27年度毎日芸術賞、同28年、旭日小綬章を受けている。主な著書に『孟夏の太陽』、『沈黙の王』、『晏子』、『孟嘗君』、『太公望』、『風は山河より』、『草原の風』など。「文藝春秋」誌に12年にわたり連載した大著『三国志』は、計12巻に及ぶ。『宮城谷昌光全集』(全21巻)も刊行されている。